どこの国に住んでいようとも、生活するためには働いて収入を得なければなりません。
これからオランダの社会で生活を始める人、これからオランダに来ようと計画をしている人にとって、オランダの平均年収やそれに伴う労働者の権利、生活水準を知ることは、自身の生活が成り立つのかを判断するための基準になります。
オランダと日本の平均年収を比較した上で、オランダの労働事情や生活水準、オランダの地域別に観る賃金格差などについてご紹介します。
また、世界全体から見たオランダの収入で観る位置づけなどにも触れていきます。
※1ユーロ=126円 米ドル=0.88ユーロ で計算
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オランダの平均年収と日本の平均年収の違い
前置きとして、年収とはサラリーマンであれば、年収のことで給与所得控除を引く前の金額を言います。
個人事業主であれば、年商のことで諸経費を引く前の金額を言います。
オランダの平均年収はOECD(国際協力開発機構)の統計によると、40,194ユーロです。(日本円で換算すると約585万円)
参考サイト:OECD Data Net national income
日本の平均年収は約420万円です。(ユーロで換算すると33,300ユーロ)
ちなみに、OECDの統計(2017年)によると、日本の平均収入は約375万円になっていますが、ここでは厚生労働省の最新の統計の数字を記載しています。
この平均年収だけを判断材料とするのは危険です。
その理由は、これらの年収は高額所得者も含まれているため、一般的な生活水準のレベルにある人々の収入と言い切るには無理があるからです。
日本の年収の内訳に関しては、厚生労働省の発表している結果を見ると以下の様になります。
1位 300万円~400万円 全体の約17%
2位 200万円~300万円 全体の約16%
3位 100万円~200万円 全体の約15%
4位 400万円~500万円 全体の約14%
4位以下は割愛しますが、お気付きの通り、日本人の平均収入とされている金額に当てはまるのは4位に位置付けられています。
ここのランクが平均収入とされるということは、4位以下の所得者が平均値を上げているということです。
400万円未満の収入で生活している人々が全体の約48%、約半分の人々が当てはまるのにです。
オランダでも同じ事が言え、上位20%の人々は下位20%の人々の4倍の収入が有るといわれています。ヨーロッパではそれらを考慮した統計も出ています。
中間層の生活水準の人々の収入を知ることで、社会全体の平均が出てくるとし、中央値で判断されたものです。
それによる、オランダの平均収入と日本の平均収入は以下の通りです。
オランダの平均収入は23,572ユーロ。(日本円に換算すると約297万円)
日本の平均収入は240万円。(ユーロに換算すると約19,047ユーロ)
世界全体から見たオランダと日本の平均年収の位置
オランダと日本の平均年収の比較で、どの位の差があるのか分かったところで、今度は世界全体から見た平均年収の位置を確認してみます。
まず高所得者も全て含んだ平均年収での世界ランキングですが、
- オランダの平均年収は世界第6位
- 日本の平均年収は世界第19位
です。
ちなみに、このランキングの世界第1位はルクセンブルグです。金額にして、約55,132ユーロです。
上位10位までにランクインしている国々を観ると、ヨーロッパの国々が集中しています。
参考サイト:OECD Data Net national income
オランダの労働事情について
平均年収が分かったところで、今度はオランダの労働事情について話していきます。
オランダでは15歳~64歳までの人口の74%の人々が何らかの有給の仕事に就いているといわれています。
このうち、女性の割合は70%で男性の割合は80%になります。
長時間労働をしているのは全体の0.5%の人々であり、その大半が男性となっています。
オランダの雇用率は74.8%で、OECDの平均を上回っています。
では失業率はどうでしょうか。失業している期間が長い人は幸福感や自己価値観に大きな影響が出てきて、スキルの喪失感も多くなります。そうすると最終的には雇用率にまで影響を及ぼすといわれています。
オランダの失業者の位置付けは、失業しているが、現在雇用先を探している人というものです。1年以上失業している失業者の割合は2.6%です。こちらはOECDの平均を少しだけ上回っています。
オランダの労働者は最低賃金は必ずもらわなければならない
オランダには最低賃金法という法律が存在し、労働者はフルタイム勤務、パートタイム勤務にかかわらず、必ず受け取らなければならない最低賃金というものが設定されています。
雇用主がもしこれに違反すると政府からペナルティが与えられます。
最低賃金は一年に二回(1月2日と7月1日)に政府によって発表されます。
2019年1月発表の最低賃金は以下の通りです。
オランダで働いている22歳以上の最低賃金
1615.80ユーロ/月(約20万円)
372.90ユーロ/週(約47,000円)
74.58ユーロ/日(約9,300円)
※週40時間フルタイム勤務での算出
15歳~21歳の労働者には若者向け最低賃金というものが存在し、上記のフルタイム勤務の最低賃金額を基に算出されるようになっています。
参考サイト:https://www.gemiddeld-inkomen.nl/minimumloon/
賃金が支払われない、最低賃金を満たしていない場合は?
オランダで雇用されている場合、給料明細に全ての情報が記載されているので、そこを基に自分の給料と最低賃金を比較します。(給料明細に情報を記載することは義務です)
もし、自分の給料が法定最低賃金を満たしていない場合、雇用主に問い合わせます。
完全に雇用主が法定最低賃金を支払っていない事実が判明した上で、その事を認めない場合は、社会問題と雇用の組合であるSZW (https://www.inspectieszw.nl/)に相談をします。
法定最低賃金に満たない給料であった時には、雇用主は4週間以内に従業員に差額を支払わなければならないことになっています。
それでも支払われなかった時には、SZWの調査が入り従業員1名に対して1日当たり最大で500ユーロの違約金の支払いを命じることができるそうです。
ここでは自分が労働者としての立場として記載してありますが、個人事業主として従業員を雇う際にもしっかりと考える必要があります。
オランダ国内での地域による賃金格差
日本でも地域による賃金格差は見られますが、オランダにも地域による賃金格差があります。
オランダで最も裕福な地域(一人当たりの収入が高額)とされているのは
- 北ホラント州
であり、最も貧しい地域とされているのが、
- 東フローニンゲン
- 南リンブルグ
となっています。
ブルーメンダール(Bloemendaal)とワッセナー(Wassenaar)の平均収入はオランダで最も高いとされており、一人当たりの収入は全国平均の+65%です。
ペイケラ(Pekela)の平均収入はオランダで最も低いとされており、一人当たりの収入は全国平均-19%です。
また、オランダの四大都市(アムステルダム、デン・ハーフ、ユトレヒト、ロッテルダム)での収入の様子を見ると、ユトレヒトは唯一、全国平均収入を3%程上回っており、ロッテルダムは全国平均を10%程下回るという結果が出ています。
参考サイト:https://www.gemiddeld-inkomen.nl/per-provincie/
男女による賃金格差
オランダは男女平等の社会とは言われていますが、給料の統計の面では必ずしもその様な結果が出ているとは言えません。
男女の平均年収は
- 男性が42,300ユーロ
- 女性が27,100ユーロ
となっています。
25歳までの平均年収の男女差というのはあまり有りませんが、そこから46歳までの間に賃金格差が大きくなっていきます。これは、結婚、出産などを経て、やはり女性の方がパートタイム勤務になるスタイルが多いということも影響しています。
オランダでは結婚、出産による女性のパートタイム勤務への移行による問題として、スキルアップ、キャリアアップなどに大きく影響しているため、賃金格差が生まれるということでニュースになったりもしています。本来はフルタイム勤務もパートタイム勤務も待遇に差を付けることは許されていないためです。
参考サイト:Doorsnee inkomen werkenden al 10 jaar vrijwel constant
オランダと日本のパートタイム、アルバイトの平均時給は?
今度は時給で働いている人々の平均時給を、日本とオランダで比べてみたいと思います。
その前にお話ししますが、日本ではパートタイム勤務者、アルバイトと正社員での区別がありますが、オランダではそれらの権利に差が出てはいけないという決まりがあるため、パートタイム勤務の時給に関しても、基本となるのはフルタイム勤務(日本でいうところの正社員)の給金となり、そこから時給を換算する仕組みになっています。
オランダの平均時給の出し方は上記の理由から、それぞれ計算をしなければなりません。
ここでは週40時間勤務が基本となっている勤務先でアルバイトをした場合の最低賃金での計算によって平均時給を出します。
オランダの平均時給は約9.32ユーロ(日本円で約1,174円)
日本の平均時給は約1,102円(ユーロで約8.74ユーロ)
日本の平均時給は地方によって様々です。関東エリアでは上記の通りになりますが、大阪エリアでは1,049円、東海エリアでは1,020円、九州エリアでは925円、北海道エリアでは935円と平均時給に幅があります。
オランダの平均時給は最低賃金による平均時給なので、週40時間勤務が基本の会社であれば、これよりも安い時給にはならないと言うことです。
オランダで日本人が働く方法
オランダでは個人事業主として起業することができれば、まだまだ日本人はビザが取りやすい国と考えられています。
しかし、オランダに移民として登録されている各国の移民は現状として移住してきても何年後かには自国へ戻る人も多いという統計があります。
日本人でも同じです。
そんな中でも最近は日本食を作ることができる料理人(要調理師免許)であれば、オランダの企業(雇用主)が労働ビザを比較的高確率で発行してくれるということを、オランダ人の通訳の方から聞きました。
しかしこれも、社会の法律や状況がめまぐるしく変わるオランダのことですから、今限定として考えておく方が良いでしょう。
オランダで日本人が就職する、起業する方法についてはこちらの記事を参考にして下さい。
関連記事:オランダで働く3つの方法。あると役立つスキルと現地就職事情を紹介
オランダでの個人事業主の現実
オランダでは現在100万人以上の個人事業主が居ると言われています。
個人事業主には従業員の居ない個人事業主と従業員の居る個人事業主があり、従業員の居ない個人事業主の4人に1人は年金を支給されていないという現実もあります。
これはAOVという傷害保険があるのですが、これに加入していない従業員を持たない個人事業主がオランダ国内で多いということが理由です。
加入しない理由は、高額であることが一番の理由と言われています。
個人事業主の半数以上が週5日以上働いており、オランダ社会の一般的な時間にゆとりを持った働き方からは程遠い現状があるとされています。
個人事業主の1/3近くの人々は他の個人事業主の人と手を組んで仕事をするというスタイルであると言われています。
参考サイト
オランダの生活水準と人々の暮らし
オランダはOECDの統計から見ると、収入の中から商品やサービスに費やせる費用なども標準を下回っているのですが、国民の生活に対する満足度や社会に対する信用度などは高いとされています。
また、ヨーロッパ諸国の中で見ると、生活水準は、物質的生活水準や経済の安全性の面から見て平均を上回っています。
ヨーロッパの中の傾向として、生活の質の満足度は南、東ヨーロッパの人々は低く、北、西ヨーロッパは高くなる傾向があるそうです。オランダの満足度は北、西ヨーロッパの中間当たりで、上位に北欧諸国があります。
オランダは、ヨーロッパ諸国の中では貧困や社会排除に陥るリスクが比較的低い国とされています。
ヨーロッパ全体の貧困の定義は、その世帯全体の収入額がその国の平均収入の60%よりも低い場合とされています。
筆者がオランダで生活をしている中で感じていることは、まずオランダ人の価値観は日本とは少し違うように感じています。仕事をたくさんして時間を犠牲にする代わりに賃金を得ることを優先するよりも、自分のライフスタイルの変化に合わせた働き方、賃金を得ることに執着しているように感じています。
もちろん、オランダ人だってお金が欲しくないわけではありません。でも、それ以上にスキルアップすることや家族との時間を大切にしているように感じています。
これは社会保障がある程度しっかりとしている点にも起因しているはずです。
オランダの平均年収まとめ
オランダの平均年収や生活水準などからどの様な生活を送ることが出来るのか想像できたでしょうか?
国によって収入に差があるものの、支払っている税額や物価の違いなどもあるので、一概に収入が良いから住みやすい国とは言えないかもしれません。
オランダの地域によっても状況が変わってくるので、ご自身の考えている仕事やライフプランに合った住まいや職場を探す指針となればと思います。