イタリアに移住するなら、イタリアの永住権についても知っておきたいですよね。
どのような人が永住権を得られるのでしょうか?
どんな流れでどのような手続きが必要なのでしょうか?
イタリアの永住権は、イタリアに移住してすぐに申請できるものではありません。
滞在の目的により条件があり、手続きの方法も違ってくるのです。
今回は滞在の目的別に、2020年8月現在に確認できる永住権の情報をざっくりとご紹介します。
イタリアの永住権とは?
日本人がイタリアに長期滞在するためには、滞在許可証が必要です。
滞在許可証には、主に以下のものなどがあります。
- イタリア人配偶者のための滞在許可証
- 就労のための滞在許可証
- 学生のための滞在許可証
イタリアの永住権とは無期限の滞在許可証を取得することを意味します。
イタリアの永住権を取得するには、数年間の期間に限定された滞在許可証を更新していき、最終的に無期限の滞在許可証を申請することが必要なのです。
ここからは、上にあげた3つの滞在許可証から無期限の滞在許可証を申請するまでの流れを見ていきましょう。
イタリア人配偶者用の滞在許可証から無期限の滞在許可証へ
日本人がイタリア人と結婚して、イタリアに滞在するために滞在許可証の申請をすると、まずは5年間有効の滞在許可証(Carta di soggiorno per familiare di cittadino UE) が発行されます。
それから5年後に更新を申請すると、無期限の滞在許可証(Carta di soggiorno permanente)に切り替わって発行となるのです。
イタリア語で滞在許可証はPermesso di soggiornoですが、家族のための滞在許可証は最初からCarta di soggiornoという名前で発行されます。
イタリア人配偶者用の無期限滞在証の取得については、2007年より施行されている下記の法律に基づいて定められました。
参考URL:
https://www.camera.it/parlam/leggi/deleghe/testi/07030dl.htm
◆無期限滞在許可証の申請に必要な書類
基本的には次に記載する書類が必要とされています。
ところが、各地域の警察によって微妙に違う書類を必要と言われることが度々あるのです。
事前に必ず自分の管轄の警察に詳細を確認しましょう。
- 滞在許可証の申請書(管轄の警察でもらいます)
- パスポート原本と写真のページのコピー
- 現在持っている滞在許可証の原本とコピー
- 証明写真4枚
- 収入印紙(16ユーロ)
- 配偶者の身分証明書のコピー
- 結婚の証明書
- 居住地の証明書
特に結婚の証明書と居住地の証明書については「市役所発行の正式なものか、自己証明書でよいのか」を事前によく確認した方がいいです。
警察によって求めるものが違うことが本当に多くあります。
◆無期限滞在許可証の申請に必要な費用
基本的には無料です。
必要に応じて、収入印紙代や市役所の証明書の発行代金がかかります。
初回の滞在許可証と同じように、無期限の滞在許可証も発行されるのは紙のものです。
◆無期限滞在許可証を取得したあとの注意点
出産、病気などの特別な事情がない限り、6ヶ月以上連続してイタリアを離れると、無期限滞在証が取り消されます。
2年以上連続してイタリアを離れると、無期限滞在証の再申請はできません。
就労用の滞在許可証から無期限の滞在許可証へ
就労用の滞在許可証から永住権を取得する場合には、下記のような条件をクリアすることが必要です。
条件を満たしていれば、管轄の警察へ無期限滞在許可証(Permesso di soggiorno CE per soggiornanti di lungo periodo)を申請できます。
- イタリアに最低5年間合法的に滞在していること
- 有効期限内の滞在許可証を持っていること
- 家族の構成に応じた十分な収入があること
- イタリア語能力テストに合格すること
◆無期限滞在許可証の申請に必要な書類
1)自営業者用の滞在許可証をもっている場合
- 郵便局でもらうKITの中にある申請書 (Modulo1,2)
- パスポートの原本と全ページのコピー
- 現在持っている滞在許可証の原本とコピー
- 証明写真
- 収入印紙(16ユーロ)
- 無犯罪証明書 (Certificato del casellario giudiziale)(検察庁で発行)
- 裁判中でないことの証明書(Certificato dei carichi pendenti) (検察庁で発行)
- 居住地の証明書
- 確定申告書 (Dichiarazione dei redditi)
- イタリア語能力テストA2レベル以上の証明書
2)被雇用者用の滞在許可証をもっている場合
- 郵便局でもらうKITの中にある申請書 (Modulo1,2)
- パスポートの原本と全ページのコピー
- 現在持っている滞在許可証の原本とコピー
- 証明写真
- 収入印紙(16ユーロ)
- 無犯罪証明書 (Certificato del casellario giudiziale)(検察庁で発行)
- 裁判中でないことの証明書(Certificato dei carichi pendenti) (検察庁で発行)
- 居住地の証明書
- 前年度のCUD(源泉徴収票のようなもの)
- 給与明細
- 雇用契約書
- イタリア語能力テストA2レベル以上の証明書
無犯罪証明書と裁判中でないことの証明書は、現在は必要ではないとの情報もあります。
必要かどうか事前に地域の警察に確認しましょう。
◆イタリア語能力テスト
申請に必要な書類の最後にある「イタリア語能力テストA2レベル以上の証明書」。
こちらがない場合には、無期限滞在許可証を申請するためのイタリア語能力テストを受ける必要があります。
レベルはイタリア語能力検定のA2相当なので、最低でも5年イタリアで生活している人には簡単なレベルです。
聞き取りや読み取り、簡単な作文で構成されたテストで、80%以上の正解が必要となります。
◆無期限滞在許可証の申請に必要な費用
基本的には申請費用が200ユーロ、電子情報入りのプラスチックカード作成費用が2 30.46ユーロかかります。
ただし元の就労用の滞在許可証の種類により、申請費用などが異なることがあるのであらかじめご確認ください。
◆無期限滞在許可証を取得したあとの注意点
連続して6ヶ月、5年間の間に合計で10ヶ月イタリアを離れると、無期限滞在許可証は取り消されてしまうことに注意が必要です。
こちらのイタリア政府のサイトで、就労用の無期限滞在許可証についての基本的な情報が確認できます。
参考URL:
学生用の滞在許可証から無期限の滞在許可証へ
就学目的では無期限滞在許可証は申請できません。
学生用の滞在許可証からは、まず就労用の滞在許可証に変更します。
学生用の滞在証での滞在期間は、無期限の滞在証申請のために必要なイタリア滞在期間5年の中に含められますが、就労用の滞在許可証に切り替えることが必要です。
学生用の滞在許可証からイタリア人配偶者用の滞在許可証に変更、それから無期限の滞在許可証の申請になるケースも考えられます。
永住権を表すイタリア語
これまでの説明でお気づきの人もいると思いますが、永住権つまり無期限の滞在許可証をイタリア語で言うときには、滞在許可証の種類によって違ってきます。
・イタリア人配偶者用の無期限滞在許可証
Carta di soggiorno permanente
・就労用の無期限滞在許可証
Permesso di soggiorno CE per soggiornanti di lungo periodo
(2007年まではCarta di soggorno per cittadini stranieri と呼ばれていました。)
昔の名残で、まとめて永住権のことをCarta di soggionoと呼ばれることが多いのですが、正式な手続きのときには呼び方に気をつけた方がいいでしょう。
イタリアの窓口などで、担当者との誤解や混乱を避けることができます。
配偶者用の滞在許可証からの申請でPermesso di soggiornoと言ったり、反対に就労用の滞在許可証からの申請でCarta di soggiornoと言うと、間違った手続きで進められ面倒な事態になるケースがあるようです。
イタリア人でも滞在許可証の仕事に関わっている人でなければ、正しい最新情報は持っていません。
中途半端な情報に惑わされず、必ず自分で担当部署の担当者に確認するようにしましょう。
イタリアの永住権を取得するメリット
滞在許可証の申請は、イタリアに住む日本人が通らなくてはならない試練のようなものです。
手続きのために予約をしていても長時間並ぶのは当たり前。
窓口の担当者によって言うことが違い、準備していた書類とは別のものを改めて取りに行かされることもあります。
時間も忍耐力も必要な作業です。
無期限の滞在許可証さえ手に入れば、このような苦労から開放されます。
実際に無期限の滞在許可証を取得した瞬間は、得られた喜びよりも、まずはもう滞在許可証のことで嫌な思いをしないで済むとホッとするときとなるでしょう。
イタリアの国籍取得
ここで紹介しているのは、全て永住権、無期限の滞在許可証についてです。
イタリアの国籍取得は、また別の条件や手続きが必要になります。
音楽関係でイタリアに滞在する人の中には、オーケストラのオーディションの資格の中にイタリア国籍保持者とある場合があり、イタリア国籍でないために不自由な思いをすることがあるようです。
ただし日本は二重国籍が認められていないので、イタリアの国籍を取得するなら日本の国籍を手放す必要があります。
イタリアの永住権についてのまとめ
イタリアの永住権を取得するのは、簡単なことではありません。
どのような場合でも、永住権を取れるようになるまで最低でも5年かかります。
でも無期限の滞在許可証を手にしてしまえば、もう滞在許可証のことで悩んだり時間を費やしたりすることはありません。
今回こちらでご紹介したのは、あくまでも一般的な情報です。
イタリアは法律もよく変わります。
地域の警察によって言うことが違ったり、必要書類が異なったりといったことは日徐茶飯事です。
永住権を申請するときには、変更されている点があっても、この記事で何をすればいいのか流れを知っておくことは必ず後で役に立ちます。