世界中で愛されているイタリア料理。
本場のイタリア人はおいしい食事を愛するだけではなく、買い物や料理にもこだわりを持っています。
ファーストフードと対極をなすスローフードという概念は、実はイタリア生まれ。
知られざるイタリアの食事情をご紹介します。
イタリア生まれの「スローフード」とは?
ファーストフードや時短とはコンセプトが違うスローフード。
多忙な現代人、料理の手間はなるべく省きたいという方も多いのではないでしょうか。
なによりも、仕事が忙しくて料理の時間がとれないというケースも多いと思います。
時間をより有効に使うために、「時短」というコンセプトが注目を浴びている近年。
電子レンジや便利アイテムの活用は、タイパのために必須となっています。
こうした時代の流れに逆行する概念が、イタリア生まれの「スローフード」です。
お手軽に食べられる「ファーストフード」の対極にあるものとして誕生しました。
「スローフード」は伝統的な料理や、質の良い食材を生産する人々を守ろうというのがモットー。
つまり、各国や地域に残る時間や手間がかかる料理も大事にしようという考えなのです。
サステナブルにもつながる?見直されるスローフード
日本でも「SDGs」という言葉を耳にすることが多くなりました。
環境や人権に関する目標で、世界全体で実践している取り組みです。
スローフードは、質のよい食事をおいしく健康的に食べようという意味も含まれています。
料理や食事の時間を根本的から見直すことで、食材を生産する環境を守りフードロスにつなげていく狙いもあります。
イタリアは世界中で愛される「イタリア料理」の本場。
自分の国の料理への誇りや、それを守りたいという思いを持つ人が多い国です。
そのため多くの人がスローフードを実践しているわけです。
イタリアのキッチン事情
電子レンジがない
日本では常識とされている電子レンジの存在。
実はイタリアでは電子レンジの普及率はとても低いのが実情です。
電子レンジでの調理はおろか、出来合いの料理を温めるのもフライパンやオーブンで行います。
それに伴い、サランラップの使用頻度も高くないのがおもしろいところです。
ドレッシングをはじめとする調味料がない
意外なことかもしれませんが、ヨーロッパの料理において「生野菜を食べる」という習慣はイタリア料理が発祥。
「サラダ」を意味するイタリア語「Insalata」は、「塩で味つけしたもの」というニュアンスです。
現代のイタリア人もサラダをこよなく愛していますが、日本ではおなじみのドレッシングの存在は皆無。
サラダを食べるために使用するのは、オリーブオイル、塩、お酢が主流です。
人によってはオイルとお酢だけだったり、オイルと塩だけだったり。
とにかくシンプルに味わうのがスローフードの極意、といったところでしょうか。
オリーブオイルは醤油感覚
地中海の食文化に欠かせないオリーブオイル。
イタリアでは5リットル缶で販売されていることもあるほど、日常的に使用します。
オリーブオイルは料理に使うだけではなく、サラダのドレッシングとなったり、スープの風味づけとなったり、とにかくあらゆるシーンに登場。
お腹がすくと、切ったパンにオリーブオイルと塩だけをかけて食べる人も少なくありません。
イタリア版のお茶漬けといった感覚でしょうか。
とにかく日本の醬油のように使われています。
塩気が足りないときはチーズを足す
イタリア料理において登場率が高いトマトソースは、ブランドによって酸味が強かったり、甘味があったり。
そのため、塩加減が難しくなってきます。
できあがった料理に「ちょっと塩気が足りないな」と感じると、イタリア人が持ち出してくるのがチーズ。
塩気の強いペコリーノチーズなどを削って、塩気を補います。
青空市場大好きなイタリア人
イタリア人の3人に2人は青空市場愛好者
イタリアにももちろんスーパーマーケットはたくさんあります。
しかし食にこだわるイタリア人が足を運ぶ場所、それが青空市場です。
各地で定期的に開催されている青空市場では、場所によってはその土地の生産者から直接買うことができます。
イタリア自作農総連合会の報告によれば、じつにイタリア人の3人に2人は青空市場愛好者。
新鮮でおいしい地元産の食材を買うのが習慣となっています。
味見をして文句を言っておしゃべりをたのしみつつ買い物
青空市場のよいところ。それは、店主や常連さんたちとおしゃべりを楽しみながら買い物ができる点です。
イタリアの食材はたいていが量り売り。必要な量だけ買えるよう、木箱やかごに野菜や果物が盛られています。
常連さんともなると、イチゴやさくらんぼをちょっとつまみ食い。味に納得してから買うなんて姿も。
お客さん同士がおしゃべりを楽しみ、レシピを教え合うこともあります。
チーズや生ハム、オリーブオイル、ワインの生産者たちは逆に、「味見して!」といって食材を差し出してきます。
季節ごとに変わる味わい、家族で楽しめば食育の一環にもなります。
おまけをもらうのも忘れずに
青空市場で買い物をすると、たいていは「香草は?」と聞かれます。
そう、青空市場ではおまけがつくのです。おまけとなる香草は、たいていはセロリやイタリアンパセリ。
「おつりが1ユーロ足りないからレモンと玉ねぎをあげる」なんてこともあります。
セロリと人参と玉ねぎは、イタリア料理のベースとなることが多数。もらっても絶対損にならないおまけです。
長寿の秘訣は野菜の量?
おいしいものばかり食べているイタリア人ですが、日本と同じくらいの長寿を誇ります。
その理由はなんでしょうか。
日本の和食はユネスコの文化遺産となっていますが、イタリアの地中海食も同様。
健康のためによい食事として認められているのです。
それはおそらく、摂取する膨大な野菜の量にあるのかもしれません。
「インゲンマメをちょうだい」と青空市場でいうと、「3人家族?じゃ、600gもあれば足りるかしら」なんて答えが。
とにかく旬の野菜や果物をたくさん食べるのが、イタリア人の食生活の一環となっているのです。
手抜きもあるあるイタリアの食
朝は調理なし
トマトソースをコトコト時間をかけて煮込んだり、ラザニアや手作りパスタを作ったり。
イタリアの家庭料理は時間と手間をかけたものばかりなのでしょうか。
そんなことはありません。
日本では考えられないくらいに、手抜きをしている食事もあるのです。
たとえば朝食。
バールで朝食をとる場合は、カプチーノと甘いパンが主流。
自宅でも、コーヒーやビスケットを数枚なんてこともあります。
お弁当は凝らない
イタリアの学校制度は日本とは大きく異なり、公立の中学は2時ごろに下校。
そしてなんと給食がないケースが大半なのです。
というわけで学生たちは、おやつを持って登校します。
食べ盛りの子供たちですから、おやつと言ってもほぼお弁当感覚。
でも手の凝ったお弁当なんて作らないのがイタリアのマンマたちです。
ハムやチーズを挟んだパニーノ、チョコレートクリームを挟んだパン、フルーツや生の人参スティック。
とにかく簡単なものばかりなのです。
祝祭日は一族で食べまくる
伝統的にイタリアは、日曜日の昼食を家族や親せきと過ごすという風習があります。
そんな日は若い嫁は家事から解放され、姑やおばさんたちが作ってくれる料理に舌鼓をうちます。
ランチタイムから夕方まで、食べておしゃべりして楽しむスローライフが展開するわけです。
スローフードはスローライフへの道
ライフスタイルそのものがスローな理由
時間に制約されず、のんびりと料理や食事を楽しむスローフード。
その風潮は、ライフスタイルそのものにも影響を与えています。
「スローライフ」という言葉もイタリアでは一般的になり、大自然のなかでリラックスすることがブームとなっています。
もともとイタリアは夏のバカンスが長い国。人々は海や山でのんびりと過ごすことに慣れています。
日常的なテンポとは違うスローな時間。
イタリア人は家族や友人と過ごすそんな時間を、とても大切にしています。
まとめ:スローに楽しもう、イタリアの食文化を!
慌ただしい毎日、料理は手軽に済ませるのが効率的です。
でもたまにはそんな毎日から離れて、イタリア的にスローフードやスローライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。
おいしい食材を買い、丁寧に料理し、家族でおしゃべりを楽しみながら味わう。
毎日の生活のアクセントとして、そんな時間を持ってみるのもよいかもしれません。