ハンガリーの食文化(主食や季節料理など)。基本マナーも伝授します

ハンガリーの食文化

東欧の国・ハンガリー。

名前のハンはアジアから大移動し、古代ローマ帝国衰退の原因となったフン族からきていると言われています。

そのためか、ハンガリーの食文化にも、

  • 日本では手に入りにくい肉の部位が普通に売られている
  • パプリカ粉がもっとも重用される調味料で多くの料理にパプリカを用いている
  • 特有の季節料理や食に関する風習がある

など、日本とも西欧諸国とも異なる独特のものがあります。

ここでは、そんなハンガリーの食文化について、まとめてみました。

ハンガリー食文化の一番の特徴は「パプリカ」

ハンガリーの食文化の一番の特徴はなんといってもパプリカでしょう。

「パプリカ」という言葉の語源は、唐辛子全般を指すクロアチア語由来のハンガリー語と言われており、ドイツ語、オランダ語でも「パプリカ」と呼ぶそうです。

ハンガリーに来て「ピーマン」がないことに戸惑いましたが、こちらはフランス語で唐辛子全般を指す言葉のようです。

焼き物、煮物料理に頻繁に投入されるのはもちろんのこと、生をスライスしたものが付け合せとして出てくることも少なくありません。

果実としてのパプリカ以外に、パプリカ粉がハンガリー料理の中で重要な役割を果たしています

「ハンガリー料理」と名のつくもののほとんどがパプリカ粉で味付けされています。

ハンガリーのパプリカは、日本で売られているようなちょっと丸っこい赤や黄色のもの(こちらではアメリカンパプリカと言います)とは違って、どちらかと言うと、ししとうや唐辛子に似た見た目です。

パプリカにも

  • 辛いもの
  • 辛くないもの
  • 細長いもの
  • ずんぐりしたもの

と、4から5種類くらいありますが、もっとも一般的なのはTV(テーベー)パプリカというししとうをピーマンの3倍位に大きくした黄色いパプリカです。

ハンガリーのTVパプリカ(左)と日本でおなじみのアメリカンパプリカ

きゅうり、なすは日本の5倍はあろうかと思うほど巨大です。

きゅうりはスライスして付け合せに、なすはひき肉をのせてチーズをかけてオーブンで焼いて食べたりします。

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ハンガリーの肉。豚と鶏が中心

ハンガリーでよく売られている肉は豚肉と鶏肉です、

牛肉もありますが、売り場面積は圧倒的に小さく、人気のなさを伺えます。

値段は肉の種類による違いはあまりなく、豚肉も鶏肉も同じくらいの値段です。

鶏肉とならんで七面鳥(ターキー)も売られていますが、値段は鶏肉よりも安く、これもあまり人気がないのではないかと思われます。

私も個人的には、匂いが独特であまり好きではないです。ハンガリーに住み始めた当初、確認せずに鶏肉と思って買ってしまい、後悔しました。

豚肉も鶏肉もハンガリーでは肉以外の部分も食べるようで、大きな肉屋や市場に行くと日本で「モツ」と言われる部分はもちろんのこと、心臓、腎臓、肝臓、豚の耳、しっぽ、鼻、鶏の足、トサカなどが売られています

スーパーの鶏肉コーナー。さまざまな部位、種類が選べます。

豚の脳も人気があるらしく、バラトン湖という観光地に行ったときにレストランのメニューに載っていました。

・豚の背脂も人気

また、ハンガリーでは豚の背脂も珍重され、肉屋では背脂の塊が普通に売っています。

これは料理のコク出しに使ったり、そのままパンに塗って食べたりするようです。

背脂を別に売ってしまうためか、豚肉にはあまり脂身が付いていません。

・薄切り肉は手に入りにくい

日本人が肉で一番苦労するのは、薄切り肉が手に入りにくいことではないでしょうか?

どこの肉屋に行っても肉は基本かたまりの量り売り、スーパーでようやくソテー用のスライスを買うことができますが、薄切りには程遠い厚さです。

肉屋と懇意になるとスライスしてくれると聞いたことがありますが、私はまだ試したことがありません。

・加工品は豊富!

肉の加工品はハム、サラミ、ソーセージなどがありますが、種類はかなり豊富です。

普通のスーパーにもパック売りではない加工肉のコーナーがあってサラミで5種類以上、ハムはもっと種類があります。

ハンガリーには、あらびきソーセージとサラミの中間のような出で立ちのコルバスという食べ物があります。

これは粗挽き肉に各種スパイス(もちろんパプリカ)と香草、野菜などを練り込んで腸に詰めて燻製にしたものです。

コルバスは、そのまま豪快に焼いて食べたり、小さく切って煮込み料理に入れたりします。

コルバスにもいろいろ種類があるらしく、私がよく行くスーパーではコルバスだけで10種類くらい取り揃えています。

ハンガリーのスーパーの加工肉食品コーナー

ハンガリーの肉料理としては、以下などがあります。

  • パプリカーシュ・チルケ(チキンパプリカ):鶏肉をパプリカ粉とブイヨンで煮込み、サワークリームを加える
  • レチョー:コルバスやベーコンをパプリカ、玉ねぎ、ニンジンなど、お好みの野菜と一緒にパプリカ粉で味付けして煮込む

また、日本のとんかつのように鶏肉や豚肉にパン粉つけて油で揚げた「ラーントット・チルケ(チキンカツ)」や「ラーントット・シェルテーシュ(ポークカツ)」はどこのレストランにも置いてあり、スーパーの惣菜コーナーにも売っている人気メニューです。

ラーントット・チルケ。パン粉のきめが細かいのでフライドチキンのように見えます。

牛肉の売り場面積が狭い割には、牛肉とジャガイモ、ニンジンをパプリカ粉で煮込む「グヤーシュ」というスープは観光ガイドにも必ず載っていて、ハンガリー人も好きな料理です。

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ハンガリーの魚。高価なため頻繁には食べられない

ハンガリーは海なし国なので、魚介類は豊富ではないし、手に入りますが高価です。

肉の2倍以上します。

なので、ハンガリー人はあまり頻繁に海の魚は食べません

そのかわり、川の魚を使った料理はあります。

使われる魚はほとんどコイかナマズです。

調理方法としては、ぶつ切りにして野菜とパプリカと一緒に煮込む、小麦粉を振ってソテーする(ムニエル風)、パン粉を付けて揚げる(フォレオフィッシュ風)が主でしょうか。

地域と家庭によってはもっと独特の調理法もあるのでしょうが、お目にかかったことがありません。

魚の煮込み料理の代表は「ハラースレー (フィッシュスープ)」です。

揚げ物は、ナマズのフライ「ハルチャフィレー・ラーントヴァ」をよく見かけます。

ハンガリーの観光地、バラトン湖のレストランで食べたナマズのフライ、ハルチャフィレー・ラーントヴァ

そんなハンガリーですので、新鮮な生魚を手に入れるのには苦労しますが、ツナ缶、鯖の缶詰、イワシの瓶詰めなどはそれほど高価ではなく売られています。

中でもサバ(マカレル)の燻製のパック詰めは脂がのって焼くと香ばしく、ご飯にも良く合うので好んで買っています。日本人好みの味だと思います。

ハンガリーの主食はパンやパスタ

ここでの主食はいわゆる炭水化物源です。

日本人は米を主食にしていますが、欧米にはこれと同様の主食と言えるものがなく、あくまでも炭水化物源で、レストランでは付け合わせ(side dish、garnish)として提供されます。

ハンガリーでも他の欧米諸国同様、パンがよく食べられていますし、種類も豊富です。

ただし、あくまでも料理と一緒に食べることが目的で、日本の菓子パンのようなバラエティーはあまりありません。

クロワッサンとして売られているパンも、ただパン生地を丸めて焼いたかのようなもので、フランスのそれとは比べようもありません。

地理的に近いせいか、ハンガリー人はイタリア料理が好きで、イタリア料理店も多数あり、家庭でもパスタもよく食べられています。

家庭でもハンガリー風の味付けをしないときはイタリア風が多いようです、あくまでも私の周りのハンガリー人の傾向ですが。

スーパーのパスタコーナーには日本では特別なお店に行かないと買えないようなさまざまな種類のパスタが提供されていています。

クスクスもパスタコーナーに普通においてあります。

・じゃがいももよく食べられる

じゃがいももハンガリーの主要な炭水化物源です。

食べ方としては、ボイルドポテト、ベイクドポテト、マッシュポテト、フレンチフライ(フライドポテト)があります。

食べ方のバラエティは日本とあまり変わりませんが、食べる頻度はずっと多いのではないでしょうか?

いずれのポテトも調理済みのものが冷凍食品として大量に売られており、オーブンで加熱するだけで手軽に楽しめます。

ハンガリーでも米は食べられていますが、あくまでも付け合せの域を出ず、米の種類もパサパサの長米です。

友人に日本の米のモチモチっぽさを強調したところ「ライスがモチモチなんて気持ち悪い」と言われました。この意見が大多数なのかどうかはわかりませんが。

ガルシュカとビーフシチュー、生のパプリカを添えて

ハンガリーで最も伝統的で一般的な炭水化物源はガルシュカでしょう。

これは小麦粉を練って塊にしたものを細かくちぎって鍋の煮立ったお湯の中に投入して茹でるというものです。大きさは家庭によりさまざまなようです。

レストランではダンプリング(dumpling)として紹介されていますが、餃子もダンプリングなので、かなり広義な表現ですね。

小麦粉を練った塊を細かくするおろし金のような器具が家庭用に売られています。

小麦粉の塊をこれにこすりつけると反対側から細かくなって出てくるので、それをそのまま鍋に投入するという具合です。ちょっと中国の刀削麺に似ています。

この茹でたものを主にシチューやスープと一緒に食べます。

ハンガリーの季節料理

ハンガリー人は季節ごと、行事ごとに特徴的な食文化を持っています。

イースターにはハムを!?

まず、4月の下旬、厳密には「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」のイースターです。

日本人にとっては馴染みの薄いキリストの復活を祝うイースターですが、キリスト教徒の多いハンガリーでは大切な行事で、国民の祝日になります。

ハンガリー人はこのイースターにハムを送り合うらしいです。私はハンガリー人でもキリスト教徒でもないので、実際にこの風習に触れたことはありませんが、イースターに送られた大量のハムの処理に困っている友人がいました。

クリスマスに魚

クリスマス前の24日から25日の朝には、魚屋の前に行列ができます。

これは、ナマズやコイをパプリカ粉で味付けしたフィッシュスープ「ハラースレー」を作るためです。

フィッシュスープ、ハラースレー

そう!ハンガリー人はクリスマスにチキンでもターキーでもなく、魚を食べるのです。

ハンガリー人は年末年始に鳥類を食べるのを嫌います

鳥は足で砂を後ろに掻き出す。この動作がお金を失うことを連想するためだそうです。

年越しソーセージ

年末の30日、31日にはソーセージを買い求める人で肉屋や肉売り場は大混雑です。

ここで言うソーセージは前述のコルバスではなく、日本のポークウインナーのような、しかし、長さが20センチくらいあるものです。

これを31日の晩に家族で茹でて食べるのだそうです。あと、レンチ豆も茹でて食べるのだそうです。なんとなく、日本の年越しそばに似ていますね。

年末に食べる豚のケーキ。豚がくわえているのは、現在は流通していない1フォリント硬貨。

ハンガリー人は年末年始に豚を好んで食べます

これは、先程の鳥と逆に、豚は前足で土を手前に集めるしぐさをし、これがお金を集めることを連想させるからだと聞きました。

レンチ豆は単純に見た目がコインに似ているからだそうです。

年末にマジパンで作った豚の形をしたケーキも食べます。これも縁起担ぎのようです。

ハンガリーの食事マナー

ハンガリー人は食事の際にスープを一緒に食べることを好みます

さらに、まずスープをすべて食べてからメインディッシュを食べ始めるという習慣があります。

フランス料理やイタリア料理のフルコースでもそのような食べ方をしますが、それはスープがまず最初にサーブされるからです。

ハンガリー人は定食のようにスープとメインが同時にサーブされても、まずスープを平らげるのです。

以前、スープを途中まで飲んでメインを食べていたらウェイターに「スープは下げて良いのか?」と聞かれたことがあります。

絶対にスープを先に食べなければならないというわけではありませんが、そのような風習があることは覚えておいたほうが良いでしょう。

また基本的には、メインディッシュをスプーンを使わずに食べます

それがビーフシチューとライスが同じ皿に盛られた、カレーのような感じの料理でも、スプーンは使わずナイフとフォークでとても器用に食べます。

ハンガリーの食文化まとめ

遺伝的にも文化的にも西洋とアジアの融合が多く見られるハンガリーの食生活をまとめてみました。

食べ物そのものは和食とはかけ離れていますが、中には日本によく似た考え方や風習を感じられたのではないでしょうか?

 

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