ハイチ人の先祖はアフリカ人であるため、アフリカの文化や習慣を一部受け継いでいます。
頭にターバンを巻くことや頭の上に物を載せて運んだり、イモ類を煮て主食としたりするところなどが受け継いだ文化や習慣の例です。
いっぽう古い建物はフランスやスペインの様式と似ていたりします。
建物の他にも、フランスパンやパテ(ミートパイ)、スパゲティを好んで食べたりする点はヨーロッパの影響を受けているともいえるでしょう。
ここではアフリカやヨーロッパ、そして地理的に近いアメリカの文化の影響を受け、発展途上国ならではの生活様式をもつハイチの文化と習慣をご紹介します。
1.生活パターン
ハイチでは朝早くから仕事をする人や買い物に出かける人が多いです。
寝ていないのかすでに起きたのかわからないような早朝に、車の音や物を売り歩く人の声がします。
カミュネットと呼ばれる乗り合いタクシーや、モートと呼ばれるバイクタクシーも朝4時頃から動いているのです。
朝の涼しい時間に働いたり活動したりして昼は休み、夕方涼しい時間から仕事を再開するという生活パターンを多くの人がとっています。
(お勤めをしている人の生活パターンはまた別になります)
こういった生活バターンをとるのは、物事に時間がかかること、日中が暑いことが理由です。
2.体調不良やケガにはハーブや植物オイルで治療
病気のときには薬よりハーブティーとナチュラルジュース、植物オイルのマッサージで治療する文化があります。
例えばハイチ人の前で「風邪をひいた」とか「のどが痛い」などというと、必ず「Tea(テ)を飲め」「○○のジュースを飲め」とすすめてくれるのです。
(○○に入るのはハーブやナチュラルジュース、植物オイルの中で適切なもの)
「体が痛い」とか「足を痛めた」と言えば「○○という葉っぱをお湯に入れてシャワー(ベンエ)をしろ」「○○のオイルでマッサージしろ」となど言ってくれます。
ハイチで体調不良にいいとされるハーブや植物オイルの例は以下のようなものです。
- 腹部ぼうまん感→ニンニクの皮を煎じて少量の塩を入れて飲む
- 寒気、のどの痛み→シナモンスティックやしょうがを煮出して砂糖を入れて飲む
- 風邪の改善→すっぱいオレンジ(ゾーランジ・シー)を絞って塩を少々入れて1スプーンを1日数回に分けて飲む
- 熱、頭痛→マスクルチーと呼ばれる植物のオイルで頭をマッサージする
自然な治療法で、即効性はありませんが効果が出るものもあります。
3.使用人を雇う文化
ハイチでは一家の家事を、その家の奥さんと、大きくなった娘や同居している親せきの女性などの女性たちが行うのが一般的です。
しかし金銭的に余裕のある家や、共働きで女性が家事をできない家では使用人を雇います。
ハイチはインフラ整備が不十分で、電気・水道・ガスを自由に利用できないことから家事に時間がかかり、一家の主婦のみでは手が足りないためです。
洗濯は手洗い、食事は炭で調理が基本。
冷蔵庫の保存が効かず買い置きができないので、毎日買い物に行く必要があるのです。
使用人は男性と女性で担う仕事が異なります。
男性の使用人(ジェラン・ラ・クー)は主に門の開閉や、庭掃除、力仕事。
女性の使用人(サーバント)は食事や洗濯、家の中の掃除、そして子供の面倒を見るのが仕事です。
金銭的に余裕があれば両方、そうでない場合はたいてい女性の使用人のみを雇っています。
4.リペア、リサイクル、リユース
ハイチの人は本当に使えないものでない限り、物を捨てません。
お古やおさがりは当たり前で、着なくなった服はぞうきんとして使う場合もあるのです。
廃材を利用して物を作って販売する職人さんや、壊れた物を修理したり希望を伝えれば形を変えた別の物を作ってくれたりする職人さんもいます。
例えば揚げ物に使うスチール製のバット。
子供用の粉ミルク缶を開いて伸ばし、溶接して作られているものがあります。
スチール缶を材料にして、少し伸ばしてくぎで等間隔に穴を空け、飛び出した片面を野菜調理の際の“おろし金”として使ったりといったリサイクルをするのです。
また靴の修理屋も、道端に足踏みミシンを置いて営業しています。
ハイチは道が悪いのですぐに靴が悪くなるのですが、靴底がはがれたときなどに修理屋に持って行けば、接着するか縫い付けるなどの修理をしてくれるのです。
靴底が再利用できない場合は、専用のゴム板などをカットして新しいものを取り付けてくれたりもします。
他には家を解体する際に排出される鉄筋も、集めて溶接して別の物に作り変えて使用するのもハイチでは一般的です。
5.ハイチのスピリチュアルな世界
ここで紹介する内容には科学的根拠はありませんが、ハイチでは通説になっていることです。
人に霊が入っているような現象が身近にある
ハイチでは人に霊が入っているような現象が身近に起こります。
霊に入られる人の特徴は遺伝による体質だそうです。
霊が人に入るとどのようになるかというと…。
筆者の近所の家で起きたことをご紹介します。
その家は夫婦と中学生の女の子2人、小学校3年の女の子、幼稚園の男の子と親せきの女性が数人住んでいます。
ある夜、女性の泣き叫ぶ声と人が揉めているような声がしました。
そのうち男性の大きな祈る声が聞こえるので何事かと思ったら、まず小学校3年生の女の子に霊が入り暴れ出したのだそうです。
それがほかの女性に次々に移っていってすごい力で暴れて、家の家具を次々壊していったのだと言います。
除霊できる人によって霊は追い出され、その場はなんとか収束したのだそうです。
ハイチではこういった話をよく耳にします。
魔術を使うブードゥー教
ハイチには、アフリカ起源の宗教ブードゥー教を信仰している人が多いです。
都市部ではあまり教会を見かけませんが地方の地域のはずれにはあります。
よく聞く内容としては、ウーガンという魔術使いに依頼して魔術で病気の人を直したり、逆に恨んでいる相手を懲らしめたり殺したりすることができるということです。
ハイチの人は原因不明の病気にかかったり、元気な人が突然亡くなったりすると必ずといっていいほどブードゥーで呪われたと言います。
見えない世界のことなので実際はどうなのかわかりません。
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/ブードゥー教
ゾンビの存在
ホラーやファンタジー映画に出てくるゾンビは、ハイチのブードゥー教に着想を得たと聞いたことがあります。
たいていは墓から死体がよみがえり、化け物の様に動き回る姿で表現されているでしょう。
ですが実際ハイチでゾンビと呼ばれているのは、生きている人間です。
生きてはいますが何らかの影響で思考が低下し、いつもうつむき加減で人と目を合わさず、話すときは鼻声なのだといいます。
人がゾンビとなる過程は、ブードゥー教のウーガンやマルフェクテと呼ばれる立場の人が魔術を使って対象になる人の呼吸を24時間止め、お墓に埋められた後に掘り起こし復活させるのだそうです。
対象になる人はたいてい恨まれている人で、ゾンビとなった後は主人の立場の人に奴隷のように仕えるとのこと。
ウーガンやマルフェクテの家に行けば、ゾンビを買うこともできるそうです。
ハイチ人は嫌われたり恨まれたりすることを極度に怖がります。
それは恨みを買って魔術で殺されたり、ゾンビにされたりするという思いが根底にあるからなのです。
ハイチのタブーなこと
ハイチでタブーとされていることを2つご紹介します。
ひとつは上記でご紹介したブードゥー教関連の話。
人によっては嫌がられます。
ハイチのカナバル(カーニバル)はブードゥー教起源になっているお祭りですが敬虔なクリスチャンほど祝わない人が多いのです。
もうひとつは政治関連の話。
ハイチ人同士で議論を交わす分には問題ないのです。
しかし外国人が政治の話、特に大統領や議員についてコメントすると、下手をすれば殺されたりすると聞いたことがあります。
まとめ
ハイチの文化や習慣を少し感じていただけたでしょうか。
物を大切に考えて修理やリユースして使う生活は、日本人も学びたい部分だと思います。
ブードゥー教などミステリアスでスピリチュアルな文化もあり、怖いと感じる部分もあるでしょう。
しかしタブーに触れず普通に生活していれば、まず問題が起こることはありません。
ぜひ暮らしの中でハイチの文化や習慣を感じてみて下さい。