スペインに住む人は、日ごろどんなものを食べているのでしょうか。
この記事では、スペインの家庭で楽しむことができるグルメを、三食そしておやつに分けてご紹介します。
家庭のスペインご飯は意外とシンプル。
しかし、新鮮素材が簡単に手に入る国なので、シンプルな料理でもおいしいご飯が食べられてしまうのです。
農業国、漁業国そして畜産国であるスペイン
スペインは農業国。ヨーロッパの他の国々へさまざまな食物を輸出しています。
以前、ドイツでO-104を病原菌とする食中毒が発生したときには、スペイン産のきゅうりがその原因であるとの風評報道がありました。
ドイツ人が食べるきゅうりまでも輸出しているのが、スペインなのです。
また、スペインは漁業国でもあり、畜産国でもあります。
世界でもトップクラスの長さをもつスペインの海岸線では、魚はもちろんエビやイカ等の海産物がとれます。
畜産にいたっては、大都市から20分も車を走らせれば、牛・豚・羊がのびのびと過ごしているところを見つけるのは、スペインでは難しいことではありません。
新鮮な食材が手に入りやすい国、それがスペインなのです。
スペイン人の主食はすばりパン!
まず、スペイン人の主食はというと「パン」です。
お隣のフランス同様、バゲット(日本語で言うフランスパン)が最もポピュラーな主食です。
とは言え、スペインにも地方によっていろいろなパンがあります。
日本人が主食としている「お米」は、スペインでは野菜的な位置づけです。
なので、パエリヤを食べるときにも、パンが付きます。
スペインの朝食・甘いものが基本
まず、朝食から。
スペイン人は朝早くから活動する人も少なくありません。
子供たちの学校も、8時半から9時ぐらいが授業開始時間です。
お父さんやお母さんたちは、毎朝子供たちを学校に送り届けなくてはなりません。
そんなスペイン人の家庭での朝ごはんの典型は、トスターダ(Tostada)と呼ばれるフランスパンを縦に切ったものをトーストしたもの。
このトーストにジャムやチョコレートなどをぬって、カフェ・コン・レチェ(Café con leche:エスプレッソのコーヒーに牛乳をたっぷりいれたもの)とともに食べるのが、最も一般的です。
このトスターダは、家庭だけでなく、街中にあるバルでも注文することができます。
スペインのバルでは、コーヒーやお茶、もちろんビールやお酒まで、簡単なおつまみとともに楽しむことができます。
朝早くから営業しているバルのほとんどで注文可能です。
しかし、バルで朝ごはんを食べるなら、家庭ではなかなか食べられない朝ごはんのメニューを食べてみたい人もいるのではないでしょうか。
スペインの家庭では食べれない朝ごはん!
そんな人にお勧めなのが、ホット・チョコレートとチュロスの組み合わせの朝ごはんです。
チュロスとは、小麦粉をねって油で揚げた細長いドーナツのようなものです。たいていのチュロスには砂糖がかかっており、とても甘くて高カロリーです。
この甘いチュロスに組み合わせるのが、とても濃厚なホットチョコレートです。
スペイン人は、チュロスをこのホットチョコレートに浸して食べるのがお気に入り。ちなみに、チュロスが甘い分、ホットチョコレートの甘さは若干控えめです。
このホット・チョコレートとチュロスの組み合わせは、スペイン人にとって「夜通し飲んで騒いだ、寒い朝にたべるもの」というイメージがあるそうですが、確かに冬の寒い朝には、これ以上の朝ごはんはないかもしれませんね。
真夏はパン・コン・トマテ
しかし、夏の気温が40度を超えることも最近は珍しくないスペイン。
真夏にこのホット・チョコレートとチュロスを朝から食べることができる人は、ほとんどいません。
そんな真夏のスペインの朝ごはんは、パン・コン・トマテ(Pan con tomate)。
トスターダの一種で、トーストしたバゲットに、オリーブオイルを塗り、そのうえにトマトをのせたものです。
ときにはこのトマトの上に、スペイン産のハモンが乗っかることもあります。
トマトのさわやかさとハモンの塩気がうれしい、夏の日の朝ご飯です。
スペインの昼ごはん・肉とチーズのフライ
スペイン人が大事にしているのが昼ごはん。
「スペイン人は昼ご飯を食べるため、シエスタするために昼食休憩を3時間もとる」と良く言われます。
しかし、そんな悠長なお昼ごはんが食べられるのは、自宅と仕事場が近いことが多い地方都市や村に住む人だけなのが、現在のスペイン。
マドリードやバルセロナなどの大都市では、仕事中のお昼休憩は1時間ぐらいのところがほとんどです。
とは言え、家でお昼ごはんを食べる人にとっては、やはりこの食事が1日のメインの食事になります。
家庭で食べるお昼ごはんの典型は、野菜サラダとお肉やお魚を焼いたものといったもの。
時には野菜サラダが、マカロニやスパゲティに代わることもありますが、肉や魚のメインディシュのプレートは欠かせません。
そんなスペインの家庭のお昼の食卓のメインディッシュとして登場することが多いのが、サン・ハコボ(San Jacobo)と呼ばれるもの。
名前の由来はもちろん聖書に出てくる聖人です。
しかし、食卓に上るサン・ハコボとは、薄切り肉でチーズを挟んでフライにしたもの。肉の種類は何でもよく、また挟むチーズの種類も何でもよいという、太っ腹な聖人様の料理なのです。
実は、スペインの家庭のお昼ごはんにおいて、この「肉で巻いてフライにする料理」というのは、本当に頻繁に登場します。
というのも、スペイン各地にこのような料理がたくさんあるためです。
例えば、スペイン北部のアストゥリアス地方。
ここにあるのがカチョボ(cachobo)と呼ばれる、薄切りの牛肉でハモンとチーズを挟んで、フライにしたもの。
一方、南のアンダルシア地方にあるのが、フラメンキン(Flamenquín)と呼ばれるもの。使う材料はカチョボとほぼ同じ。
しかし、チーズやハモンを挟んだ肉をロール状にしてフライにすることがその特徴です。
そして、鶏肉のビルロア風(Pollo a la Villeroy)と呼ばれるものが、鶏肉でホワイトソースを挟んでフライにしたもの。これは、スペイン各地で見られます。
このような料理は、子供ばかりでなく、大人にもなかなか人気のある料理です。
そのため、スーパーに行けば、油で揚げられる直前の状態にまで調理された商品がたくさん販売されています。
そのせいか、家庭のお昼ごはんで頻繁に登場することが多い料理なのです。
ちなみに、このような料理は、バルで簡単につまむことができるものも多いです。
バルでスペインの家庭の味を、お楽しみください。
夕食・軽いものであっさり済ます
スペインの夕食は時間が遅いことで有名です。
家庭での晩御飯の時間は夜9時前後。さすがにほとんどのお仕事は就業時間を終えています。
仕事終わりにバルに行き、ちょっとワインを数杯飲んで、家に帰って晩御飯、というのが大人の晩御飯までのスケジュール。
家庭での晩御飯は、パンとハモンとチーズを少し、という人や、フルーツやヨーグルトだけ、という人が多いです。
若い大学生だと、友人同士が集まったときにピザやハンバーガーなどを食べたりしますが、それもほとんど週末だけ。
晩ごはんはかなりシンプルなのがスペイン流です。
とは言っても、バルでワインを飲みながら、いくつかタパスをつまんでいるので、家で簡素な晩御飯でもお腹はいっぱいになります。
日に数回あるバルでのおやつタイム
スペイン人の食事の特徴の一つは、食事の食事の間に頻繁にバルに行ってコーヒーなどを飲みながら、何かを食べていることでしょう。
そんな時、コーヒーのおともに食べるものがタパス。タパスとは元々お酒を飲むときにつまむ、いわゆるおつまみのことでした。
しかし、現代のスペインではコーヒーやお茶、ミネラルウオーターを飲みながらタパスを食べても、なんの問題もありません。
タパスの種類は本当に豊富で、バルによっていろいろなものがあります。
しかし、スペインの代表的なタパスと言えば、
- ジャガイモのフライ
- ロシア風サラダ(ジャガイモとカニカマのマヨネーズ合えサラダ)
- ハモンやチョリソーといったお肉系
- 海老のフリッター
- ミニハンバーガー
- 豚の鼻の肉を素揚げにしたもの
- 塩漬けオリーブ
といったものになります。
そんな、数多くあるバルのタパスの中でも、伝統的にスペインで人気のあるタパスの一つがトルティーリャ(Tortilla)、いわゆるスパニッシュ・オムレツです。
最も伝統的なレシピによるトルティーリャの具は炒めたジャガイモなのですが、今ではさまざまな野菜が入ったものがバルのカウンターに並びます。
スペインのトルティーヤの特徴の一つが、その厚さです。
スペインのバルで見かけるトルティーヤでは、その厚さが3~4センチメートルあるようなことも珍しくはありません。
スペインのトルティーヤは円形のため、厚さが3~4センチメートルもあると、一見したところバースデーケーキのような形状になります。このようなトルティーヤは、1ひとかけらで十分お腹いっぱいになるほど大きいものです。
スペインの食生活はシンプル
ここまで、スペイン人の一般的な食事の様子を見てきました。
ゆたかな食材を生み出す農業国であるせいか、スペインの家庭での料理は焼いただけ、あるいは炒めただけ、といったものが少なくありません。
でも、毎日食べるということを考えると、こんなシンプルな料理が一番おいしいのかもしれませんね。