タイトルを見て「移住しなくても観光で行けば良いのでは?」と思われる方もいらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、ドイツはとても広く、ベルリンとミュンヘンの間を移動するだけでも飛行機で約1時間、電車では4時間半〜5時間もかかる距離です。
限られた観光時間の中ではなかなか行けない場所も多くあるのです。
今回は、ドイツ移住してから是非ゆっくり行っていただきたい、魅力あふれる田舎町をご紹介します。
田舎に行くには車がないとダメですか?
ドイツの電車はとても優秀ですが、小さな町ですと近隣の大きな町まで電車でアクセスし、そのあとは本数の少ないバスの乗り継ぎでしかアクセスできない場所もあります。
観光をメイン産業にしている町ではない、いわゆる普通の田舎町では基本的にみんな車を所持しています。
ドイツといえば車の国としても有名ですね。車好きでなくても聞いた事があるようなメルセデスやフォルクス・ワーゲン、BMWなどはみんなドイツの会社です。
大きな駅や空港には基本的にレンタカー会社が入っていますので、自家用車がなくてもレンタカーやカーシェアを利用して田舎町へアクセスしましょう。
小さな街にはタクシー会社がない場合もありますので、大きな街からタクシーでアクセスする場合は帰りの時間も予約しておいた方が良いでしょう。
日本人になじみのある街、Calw(カルフ)
カルフってどこにあるの?
カルフ(Calw)はドイツの南西部、シュトゥットガルトから車で30〜40分ほどの場所にあります。
シュトゥットガルト中央駅から電車とバスを乗り継いで1時間ほど。
「黒い森」と呼ばれる自然あふれる地域に位置しており、日本人向けのツアーなどではあまり観光に来ない街です。
カルフの魅力とは
しかし、日本人には実は馴染みのある街でもあります。
それは、ドイツ出身の作家「ヘルマン・ヘッセ」の生家や小さなミュージアムがあること。
日本の中学校の教科書には必ずヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」という話が載っています。これによってヘルマン・ヘッセの小説はあまり読んだ事がないけれども…という方でも彼の名前くらいは聞いた事があるはずです。
田舎町にいってみたいけど、どこに行こう?と迷ったら、とっかかりとしては選択しやすい街ではないでしょうか。
せっかくドイツに移住したのですから、ドイツ出身の作家の作品を読んでみるのも良いかもしれませんね。
カルフの街並みは本当に最高なので、是非見ていただきたい場所でもあります。
ドイツの古い建築(主に住居)がしっかりと残っていて、家の枠組みを作っている木の梁は100年以上もそこでこの家を支え続けているものです。
すでに家ごと傾いていますが、今でも現役の住居です。その可愛らしさは日本の建築には見られないものになります。
この街は小さなナゴルト川に四方を囲まれていて、街の外には出て行くには必ず橋をわたります。
そのうちの一つであるニコラウス橋の上にはニコラウス教会とヘッセの銅像が建っていて、彼はこの橋を毎日往復していたと言われています。
すでに彼の作品を読んだことがある方は気づいたかもしれませんが、彼の作品にはこの街そのものが多く描写されています。
子供が泳げる浅い瀬、さほど長くない橋、街の人々は皆顔見知り…この小さな街を1周するには30分も必要ないほどですが、その美しい木組みの歴史的建築物を眺めながらヘッセへの思いを馳せ、カフェでコーヒーを飲む時間は何ものにも変えられないでしょう。
カルフ観光案内のサイトはこちら。ドイツ語と英語の表記があります。
カルフと一緒に訪問したい、ユネスコ世界遺産に登録された Maulbronn(マウルブロン)
マウルブロンは修道院の街
先に紹介したカルフから車で1時間(電車やバスを乗り継いで行く場合は3時間半)ほどのところにあるマウルブロンもオススメです。
ここはドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にある街ですが、ここには有名なマウルブロン修道院があります。
カルフと合わせて紹介する理由は、このマウルブロン修道院にヘルマン・ヘッセが入学していたことがあり、しかし心を病んでしまったことにより逃げ出した…という逸話付きだからなのです。
修道院はマウルブロンの街はずれに位置していますが、街と修道院の敷地は城壁で隔てられています。
いまはメインの建物は博物館となり、小さな本屋があり、住んでいる人も少しだけみられますが、もともとは修道院の生徒や修道士の方々のみが暮らす、閉鎖的な一つの街でした。
生徒は学校の寮に住み込みで学び、街の外に仕事を求めるのではなく修道院の土地内にある田畑を耕し、馬を管理し、パンを焼いていたそうです。
そうして修行をしながら修道士同士が協力しあって生活をしていた場所が、そのまま残っているのです。
現在まで残る製パン所、家畜小屋などはユネスコ世界遺産にも登録されています。
マウルブロンで食べたい伝統料理とは
ところでこの地域名、マウルブロンで思い出されるのはドイツの伝統的料理「マウルタッシェ」ではないでしょうか。
ドイツ風餃子と紹介されている事も多いこの料理ですが、本当の名前はマウル・タイヒタッシェと言います。
お肉が小麦粉で作られた皮に包まれているのですが、この料理はもともと修道士さんがお肉を食べては行けない時にどうしてもお肉が食べたくなった時、皮に包んで見えないようにして食べたのが発祥という話もあります。
訪れた際は是非本場でマウルタッシェを食べてみてください。
マウルブロン修道院のHPはこちらをご覧ください
マウルブロンの街のHPはこちら。ドイツ語、英語、フランス語の表記があります。
果実の街とワインの街、Werder(ヴェルダー)
ドイツでも人気なお祭りが開催される場所
ヴェルダーはドイツの北東部、ポツダムとベルリンの間に位置し、どちらも中心地から電車で1時間ほどの場所に位置しています。
ここは何と言ってもお花・果実の街として知られています。
特に有名な観光名所があるわけではないので知らない方も多いと思いますが、ここのお祭りはとても有名でドイツ各地から観光客が訪れて賑わいます。
毎年4月末から5月第1週に花と果実の祭りが開催され、伝統衣装に身を纏い音楽を演奏したりしながらのパレードは、とても可愛らしく見ていて楽しいものです。
そしてこの花と果実の祭りではたくさんのワインスタンドが出店されます。
その多くはこの地域のお花や果物で作られたちょっと特別なワイン!普通のブドウ酒ではなく、カリンやイチゴ、リンゴやベリーで作られたワインなど種類も豊富です。
どこのスタンドも味見をさせてくれるので、じっくり好きな味を探してみるのも楽しみの一つです。
歴史的な建物が残る街の景色も素晴らしい
もちろんお祭りの期間以外もオススメな場所です。
島内にはユーゲントシュティール(アール・ヌーボー)様式の建物が残っており、繊細な石彫の装飾は素晴らしく見応えがあります。
背の低い平屋の民家が多く残っていますが、背の高いドイツ人は中で窮屈なのでは?と心配になってしまうほどのコンパクトさで驚かされます。
島で一番目立つのは、丘の上に建つ木でできた風車ですが、これはなんと西暦1500年前後に建てられたものだそうです。
かなり古いですし、きしむ場所もあるので少し怖いですが、風車の中側も見学できます。
ヴェルダーの船着場周辺にはレストランやカフェも立ち並んでいて、とてもおしゃれな雰囲気でオススメです。
燻製うなぎのサンドイッチや、シメサバのサンドイッチなど魚系の料理もいくつか見られます。
ドイツといえばお肉料理がほとんどですので、お魚が食べたくなったらウェルダーに行ってみるのも良いかもしれませんね。
ちょっとマニアックな映画ファンの方はドイツの白黒映画「エーミールと探偵たち/Emil und die Detektive(原題)」でウェルダーの名前を知っていたかもしれません。
この映画では1930年代のウェルダーを見ることができ、そこにあの風車がしっかり映っていることに感動できるはずです!1931年の映画をオススメするなんてマニアックすぎでしょうか(笑)
ヴェルダーの街のHPにはイベントなどの情報が載っています。ドイツ語、英語表記があります。
超穴場・島全体が世界遺産、Reichenau(ライヒェナウ)
ひっそりと歴史を刻み続ける島、ライヒェナウ
ライヒェナウという地名を聞いてわかる日本の方はまだとても少ないでしょう。ここは島全体がユネスコ世界遺産に指定された歴史的な街です。
ライヒェナウという場所はコンスタンツ湖に浮かぶ島。コンスタンツ湖は南ドイツにあるボーデン湖のお隣に位置しています。
ボーデン湖といえばフリードリヒスハーフェンが有名でしょうか。
ドイツではリゾート地の一つとして非常に知られていますし、かつて飛行船「ツェッペリン号」が開発された場所として有名になりました。
カヌー、サーフィン、水上スキーなどの水遊びだけでなく、飛行船での遊覧飛行、自然の中のハイキングなど空海陸すべてで楽しめる最高にリッチな街、それがフリードリヒスハーフェンなのです。
しかし、そんな超有名リゾート地のすぐそばにあり、しかも世界遺産に登録されていながらほとんど無名の田舎町(田舎島?)ライヒェナウ。
聖ゲオルク教会、聖マリアマルクス教会、聖ペーターパウル教会という3つの教があり、10世紀ごろが最盛期で多くの修道士が住んでいた島のようです。
教会内部に残されたフレスコ画は1000年以上も前のものでありながら、今も美しい色彩で残っています。修道士さんがいなくなった後も静かにその場所に残されて…まさに時間が止まったままの島。
日本人どころか観光客自体ほとんど来ないこの街は、ドイツに住んでいないと行きづらい街ランキングを作ったら上位ランクイン間違いなし!リゾート地での夏休みついでにいかがでしょうか?
まとめ
今回はドイツの代表的な、よく知られた田舎町ではなく、まさにドイツに住んでいないと行きづらい場所を紹介しました。
こういった場所は観光地ではないので何かの「きっかけ」がないと訪問しないどころか知らないままであることが多い街です。
しかし、せっかくドイツに移住するのですから、観光客があまり行かない場所に足を伸ばしてみるのも楽しみの一つではないでしょうか。
何もなくとも、のどかな田舎風景に癒されること間違いなしです。