「ギャップイヤー」を知っていますか?
学生でもなく、定職もない、何者でもない期間。ヨーロッパでは当たり前の習慣です。
高校から間髪入れずに就職か大学進学、その後も退職まで駆け抜ける。
でも、その進路は本当に自分で選んだものですか?
日本の忙しさに将来を託す前に、海外に出てみませんか?
ギャップイヤーとは?
「ギャップ(Gap)」とは、2つの物事の間の空間、「隙間」という意味です。
つまり、ギャップイヤーとは、高校や大学等のまとまった期間の間に「どこにも所属しない」期間を設けることです。
元々は1970年代にイギリスでヒッピー文化が流行したことが始まりであるとされています。
ヒッピーは「自由」を最大のスローガンとした活動で、高校を卒業した多くの若者たちがリュックサックひとつでアジアの国まで旅行しました。
ヨーロッパ諸国ではギャップイヤーの習慣が深く根付いています。
高校から大学進学までの間や、大学在籍中に休学をして1年~2年アルバイトをしながら旅をすることは一般的です。
また、国全体の雰囲気としてギャップイヤーを取ることを推奨しています。
ギャップイヤーの回数や長さは人それぞれですので、大学や大学院まで進学すると、同級生の年齢幅は非常に広いです。
「何者」でもない時間。何のために、過ごし方は?
ギャップイヤー期間中は学生でもなければ会社員でもないので、「何かをしなければならない」という義務は一切ありません。
1日中海岸に座ってぼんやりとしていたり、アルバイトをしてお金を貯めたり、自分にできることであれば何をしてもいいのです。
「自分を見つめなおす」と題を打ちましたが、ギャップイヤーの間は24時間365日自分の将来について考え続けなければいけない、という義務もありません。
ただ、深く考えるための時間が十分に与えられる、そんなイメージです。
とは言え、人間本来の性質としてただただ暇を持て余すことに耐えられないようで、アクティブに活動する人が多いです。
- 海外に旅行をしたり
- そのための資金をアルバイトで稼いだり
などに、時間を費やします。
また、
- ボランティアや長期のインターンシップに参加したり
- 語学学校に通ったり
- 資格を取る
など、将来のキャリア形成に役立つ活動をする人もいます。
本当に自分が進みたい道は何なのか、じっくり時間をかけて考えて次に進む。
また、学校だけでは手に入れられない「自分だけの特別な強み」を育てる、これがギャップイヤーの意義です。
日本の現状。ギャップイヤーを取ることは難しい?
日本ではまだ浸透しないギャップイヤー
日本では、ひとつ教育課程が終わると間を置かず次に進むのが一般的ですよね。
大学進学のことだけを考えても、特に地方では経済的な理由や世間体を気にして「浪人をするくらいなら大学のレベルを下げてでも現役で入学したい」と考える「現役志向」が強いです。
大学進学後も、初対面の同級生との会話で話のネタとして現役か浪人かを尋ねることは度々ありますし、その情報はその人を分類するカテゴリーのひとつにもなります。
そもそも、浪人期間の人々にも大学進学を目指して受験勉強を「しなければならない」という義務がありますから、ギャップイヤーとは異なります。
浪人生がアルバイトや趣味に時間を掛け始めたら、周囲の人からはあまり良い顔はされませんよね。
また、大学を怪我や体調不良、単位不足・出席日数不足等の「のっぴきならない」理由なしに休学したり、卒業後に進学も就職もせずに「ふらふら」していることも、あまり歓迎されません。
日本の就活では、卒業直後の「新卒社会人」を優遇する企業が圧倒的に多いです。
また、新卒であっても履歴書に休学期間があると、「何をしていたのですか?」と聞かれます。
何もしていなかった、旅行をしていた、と答えるとその期間が「空白」であったかのように判断されてしまうこともあるようです。
日本にはギャップイヤー期間中にやることがあまりない
ネガティブな雰囲気に打ち勝ち、ギャップイヤーを取ろうと決心したとします。
日本で過ごしつつギャップイヤーを取るのならば、その後のキャリアに影響が出ないように行動する必要があります。
例えば企業でインターンシップをしたり、ボランティア活動をしたりするのが良いでしょう。
しかし、残念ながら日本には「何も持っていない」人を1年や2年のような長期間受け入れる体制がそれほど整っていません。
高校を出たばかりであったり、休学中の大学生には多くの場合経験も資格もありませんよね。(ギャップイヤーはこれを得るための期間でもあるのですが…。)
数日から数週間の短期間であれば企業インターンシップやボランティアに参加することもできますが、長期間の受け入れとなると簡単ではありません。
旅行やアルバイトではその後の将来にハンデを負うことになる、しかしキャリア形成できる活動にも制限がある…。
現状では、若者が日本で「何者でもなくなる」ことにはリスクしかないのです。
それなら、ギャップイヤーは海外に行こう!
ギャップイヤーがなかなか浸透しない日本ですが、海外留学や海外での滞在経験に関する需要は、社会のグローバル化によって年々高まっています。
そこで、留学や海外インターンシップを利用してギャップイヤーを「正当化」してしまいましょう。
「留学をするためにギャップイヤーを取るのでは…?」という声が聞こえてきそうですが、日本では忙しさや常識にとらわれてギャップイヤーを取ることができないから海外へ行く、という考え方もあっていいと思います。
今までの自分を見直し、これから進みたい方向はどちらなのか考えつつ、海外経験や英語力も得ることができるので、一石二鳥です。
今までがむしゃらに流れに乗って来たけれど、突然立ち止まって考え込んでしまう瞬間が誰にでもあるはずです。
そのもやもやした気持ちを「仕方がないから」と忘れてしまう前に、時間を作って向き合ってみませんか?
ヨーロッパ人の考えるギャップイヤーの意義。そして5つのメリット
ヨーロッパ諸国は若者たち、主に高校卒業後から大学、大学院に在学中の学生が積極的に外国でギャップイヤーを取ることを推奨しています。
また、最近ではアメリカ合衆国もギャップイヤーに好意的です。
2016年には、オバマ元大統領長女のマリア・オバマさんがハーバード大学進学前に1年間のギャップイヤーを取ることが大きく報道されました。
そこから、アメリカにも浸透しつつあるようです。
調査に基づいて、彼らはギャップイヤーには次のようなメリットがあると考えています。
参考: https://gapyearassociation.org/data-benefits.php
1. 人生経験を積み、社会人としての成熟を早める
ギャップイヤーにはルールがありませんので、当然自分で何をするか設計します。
そのため、自分で考え行動する力が身に付きます。
また、同級生や教授のように無条件に仲間になれる人間以外と接し、信頼を得る努力をすることで社会人として成長することができるのです。
2. 本科の大学でのモチベーションを向上させる
大学入学前、または入学後にギャップイヤーを取り、自分の専攻と興味についてじっくり考えることで、適切な進路を選択できます。
その結果選んだ学問分野には、「自分で考えあぐねて選んだ」というある種の「思い入れ」が芽生えるので、満足して取り組むようになる人が多いという調査結果があります。
日本では自分の模試の結果と大学の偏差値をすり合わせて、どの大学を受けることが「できるか」が先に決まり、その上でどの学部に進むかを考えます。
一方、ヨーロッパの多くの国では入試はそれほど難しくなく、どの大学に進むかは個人の意思で決まります。
とはいえ、高校卒業直後では、まだ未熟で意思決定能力が低いというのは日本と同じです。
そこで、1年程度社会に出て経験を積み、進路にの判断をするのです。
3. 外国で生活することで世界に対する知見が広がる
外国に出ることで、国内では知りえなかったことを多く見聞きします。
最も大切なことは、「自分が何を知らなかったか」を知ることです。
無知を自覚し、まったく新しいことに触れることで、今まで目に見えてさえいなかったことにも興味が広がっていきます。
知識や経験を増やすためには、調査や体験という行動をとる必要がありますが、この行動を起こすためにまず必要となるのが「興味」です。
海外生活は、興味を向ける対象を増やします。
近年日本でもグローバル化が進んでいます。しかし、世界から見た日本はまだまだ鎖国状態です。
テレビのニュースや新聞の内容はほとんど日本国内のことです。従って、私たち日本人の興味の幅は、世界と比べて非常に狭いです。この状況で国内にいては、自分の無知を知ることも難しいです。
4. 自分に合った専攻を考え直し、変更する機会を与える
これは2番目の「本科の大学でのモチベーションを向上させる」と似ています。
自分んで選んだ学部に進学したとしても、在学中に興味を失ったり、違和感を感じることはよくあることです。
この状況に陥ったとき、ギャップイヤーを設けてもう一度自分の意思を考え直します。
その結果、自分の居場所が適切でないと判断するならば、学部や大学を変更することは全く悪いことではないのです。
自分の未熟さゆえに、ひとつ前の選択は誤りだったので、経験を積んだ後に新しく正しい選択をする、というだけです。
5. 就職の幅を広げ、キャリア形成を助ける
ヨーロッパ諸国でも、就職に有利に働くのが言語力です。ヨーロッパ人は英語ができて当然と思われるかもしれませんが、彼らも高校や大学で日本人と同じように英語を学びます。
母国語と英語の言語の系統が似ていることや、使用する頻度が圧倒的に高いことから定着度が高いということは否定できませんが、習得するためにある程度努力をしているのです。
外国に住むと、必然的に英語でコミュニケーションを取ることになります。
自分の英語力に自信を持つことは、ヨーロッパでもキャリア形成において重要なことです。
また、現地の言語を習得したり、その国の文化を理解することも就職に有利に働きます。
現代社会において、外国との関わりを一切絶ち、独立して成り立つ国はありません。グローバル化は進み続けています。
従って、どの分野の仕事に就いても外国とのやり取りを担う人物は不可欠です。
その際に、相手国の言語を使える人物はかなり重要ですよね。
さらに、言葉を話すことができるだけでなく、相手の文化を理解していれば交渉もよりスムーズになり、関係も良好になる可能性がありますね。
ヨーロッパでは、就活の際に、自分がいかに特別で、誰にも負けないスキルを持っていて、御社にとって不可欠な人材なのかをアピールします。
外国に対する理解を深めることは、自分のアイデンティティを形成する意味でも有利に働くのです。
ギャップイヤーを取ると成績が上がる?
また、アメリカの調査結果によると、高校卒業後にギャップイヤーを1年取得した学生は、取得しなかった学生より大学でのGPAが高いことが分かっています。
また、大学での成績だけでなく、卒業後の就職先も、ランキングの高い企業が多くなる傾向にあるそうです。(成績や企業ランキングを持ち出すところがいかにもアメリカという感じですが…。)
参照:https://www.gapyearassociation.org/data-benefits.php
やはり、進路を自分で選ぶという行為が学生のモチベーションアップに繋がるのでしょう。
また、社会経験を積むことで物事の道理を抑えた行動ができるようになる、というのも1つの要因かもしれません。
日本にも、ギャップイヤー×留学の波が来る?
ここまで世界中で称賛されているギャップイヤーの存在は、日本の教育機関の最高峰、文部科学省の耳にも当然届いています。
現在、文科省は、東京オリンピックの開催される2020年までに留学人口を倍増するという計画を進めており、それに関連してギャップイヤーの普及も目指しています。
この活動は政府だけでなく一部の企業も巻き込んで進んでいますので、日本でギャップイヤーの価値が認められるのも遠くないかもしれません。
海外でギャップイヤーを取ろう
ギャップイヤーとは、次の教育課程進学前や就職前に1~2年の隙間時間を設けることです。
現在のところ、日本ではその意義が認められていませんが、留学や海外滞在経験は重視される傾向があるので、ギャップイヤーを海外で過ごすことはオススメです。
ヨーロッパやアメリカでは、調査結果に基づきギャップイヤーが推奨されています。
あなたのキャリアップのために、思い切ってギャップイヤーを活用してみてください。
新しい自分、そして道が切り開けるかもしれませんよ♪