コーカサス3か国※の内最も小さい国であるアルメニアですが、実は歴史が非常に長く、世界で最初にキリスト教を国教とし、独自の文化を築いてきた事でも有名で、その影響は西ヨーロッパまで及んだと言います。※未承認国家3か国を除く
この独自の文化を実際に現地に行き、体験することもアルメニアに行く醍醐味の一つですが、やはりある程度事前に知っておくことで、不要な摩擦やすれ違いを避け、より快適に滞在することができます。
ここでは、アルメニアが歩んできた歴史や築いた文化を説明しながら、現地で避けるべき行為や言動を等をご紹介いたします。
アルメニアではキリスト教の影響が未だに強い
アルメニアは、西暦301年にキリスト教を国教とした世界初の国ですが、ここに加えて、アルメニア教会は西ヨーロッパのカトリックやプロテスタント、ロシアやジョージアの東方正教会とは異なり、独自の分派を成しています。
さらに、国として憲法の中でアルメニア教会に対して特別な地位を保障しており、国民のアイデンティティの一部となっています。
このような背景から、アルメニア人は、長いキリスト教徒としての歴史や独自性を誇っており、上記のグラフでも見られるように、教会の影響力は非常に強いものとなっています。
これが、日常生活でどのような場面で影響してくるかというと、小さな部分ではクリスマス等の祭日を祝う日が異なるところがあったりします。
アルメニア教会は旧ユリウス暦を採用しており、1月6日にクリスマスを祝います。
12月25日に「メリークリスマス」というと、苦笑いされながら「違うよ」と優しく指摘されます。
大きな部分では、後述する他の要因もあるものの、教会の影響力によりアルメニアは非常に保守的な国になっています。
首都エレバンでは、近年国際化が進み、その風習がなくなりつつありますが、首都を一歩出ると、例えば女性による喫煙が非常に嫌がられていたり、女性の夜10時以降の独り歩きを不貞の証と見なしたりと、日本からみると前時代的な風景が未だに色濃く残っています。
また、教会の影響から婚前交渉(特に女性)は御法度とされ、非アルメニア人との結婚を快く思わないことが多いです。
その反面、女性は「子を成す」ということから、国の根幹を成すとされているので、非常に大事にされる傾向があります。
追悼式は毎年4月24日アルメニア人虐殺の影響は根強い
アルメニアの歴史を語る上で、絶対に外せないのは1915~23年にトルコが一貫した責任を有するとされるアルメニア人ジェノサイド(虐殺)です。
毎年4月24日には、全国各地でジェノサイドの追悼式が行われ、ほぼ全国民が参加するイベントが行われ、首都エレバン等では、前日の23日の夜に追悼マーチを行うほど全国民に浸透しています。
また、この事件は、当事者とされるトルコが105年間もその存在を否定し続け、欧米各国との間で度々政治的なカードとして使われています。
実際、最近では米国議会でアルメニア人虐殺をジェノサイドと認定する決議が採択され、米トルコ間で大きな問題に発展しています。
そして、このアルメニア人虐殺は、アルメニアの文化に2つの大きな影響をもたらしているとされています。
一つは、アルメニア人は、外国人に対し非常に寛容で、友好的です。
これは、ジャノサイドを逃れるため、トルコを脱し、世界各国に散った同胞たちが、同様に現地で友好的に迎え入れられたこと、引き続き友好的に受け入れられるようにとの願いがあってのことです。
実際に、アルメニアのどの街でも、困っている外国人がいたら積極的に助けてくれます。
そして、何故助けてくれたのかと聞くと、皆揃って同じ理由を口にします。
他方で、この事件は、アルメニア人に対してもう一つ大きな影響を与えており、それは、「アルメニア」という国を維持・発展させなければならないという強い意思です。
アルメニアは、幾度となく国家・民族の危機に晒され、直近ではアゼルバイジャンによる虐殺や戦争によっても多くのアルメニア人が亡くなっています。
このため、アルメニアの血を残さなければならないという意識が働き、婚姻相手も極力同じアルメニア人、といった意識が強いです。
(アルメニア人のディアスポラは若干事情が異なります)
そのため、これらの事件は、アルメニア人のアイデンティティの一部となっていますので、それを否定するような事や、トルコよりの発言(例えば、「戦争だったから虐殺されても仕方がなかった」、「大勢死んだものの、ジェノサイドではない」といったもの)をした場合、非常に強い非難を受けることになり、場合によっては喧嘩に発展する可能性がありますので、気を付けてください。
けして冗談のネタにしていいテーマではないということになります。
ヨーロッパの中に中東の文化・風習を取り込んでいる独特性
アルメニアは人種的にも言語的にもヨーロッパに属しますが、長らくオスマントルコやペルシャ帝国(現イラン)の支配下にあった影響から、中東の文化を多く取り込んでいます。
買物は必ず値切るのが普通
スーパーや百貨店等、いわゆる「現代的」な店では、値切る等の行為は不要ですが、市場やオープンマーケットでは、値切ることが普通とされています。
その為、一見「高い」とか思っても、特に「外国人だから」高いのではなく、値切る前提での価格設定になっているから高いということを知っておく必要があります。
そして、値切り交渉をしている時、必ずと言っていいほど「どこから来たの?」、「よく来たね!」といった会話に移っていき、場合によっては新たな友情へ繋がることがあります。
中東と似て、アルメニアでは会話を楽しむ事を重要視しており、この値切り交渉もその一環なので、それを理解して交渉に挑むことをオススメします。
アルメニア料理は中東料理を進化させた料理
トルコやペルシャに長らく占領され続けた影響が最も色濃く現れるのは、料理です。
アルメニアには、
- ケバブ(現地ではケボブ)
- シャウルマ(ギリシャのギロピタの基となったもの)
が非常に人気で、アルメニア料理として数えられています。
中東版との違いと言えば、使われる香辛料の違いや、もう一歩手の込んだ派生形の料理が多くあります。
豊な歴史と文化が育んだ食文化を体験することもアルメニアの楽しみ方の一つです。
歴史と文化を理解して行けばより楽しめるアルメニアのまとめ
アルメニアは、長い歴史と文化を有し、いくつか独特な部分があります。
それらを理解せずに渡航した場合、すれ違いや問題に発展したりしますが、事前に知っておくことにより、「ああ、こういう背景があるからこうなるのか」と納得することができます。
そして、それらを理解することによって、より現地人と友好的に接することができ、場合によっては家に招かれたり等、貴重な経験をすることができるかもしれません。
アルメニアに渡航する際には、ぜひ、これらを参考のうえ渡航していただければと思います。