子供の成長過程で必要なもの、それは「教育」です。
国は違えど、子供に対する教育は欠かせません。
ではパキスタンでは
- どのような教育システムが導入されているのでしょうか。
- 日本のように、公立・私立の違いや、義務教育制度なるものはあるのでしょうか?
- また、日本人学校はあるのでしょうか?
- 教育格差はあるのでしょうか?
- イスラム教はパキスタンの教育に影響しているか?
などを現地在住社から、一つ一つ分析しながら説明していきたいと思います。
パキスタンにおける女性の識字率は60パーセントだった
パキスタンに来て、生まれて初めて「字や数字を読めない、書けない人」に出会いました。
彼女は60代半ば、学校には通わなかった、とのこと。
16歳で結婚して11人の子供を授かり、育てあげてきたそう。
第一子と末っ子の年齢差は20歳。勉強は一切せず、家事だけをこなしてきたそうです。
パキスタンの国語、ウルドゥー語もろくに話すことができないようでした。数字も読めないとのこと。衝撃的でした。
よくよく調べてみると、パキスタンにおける女性の識字率は、60パーセントほどしかありません。
地方のへき地や山間部などはさらに低下するようです。
なぜなのでしょう。
まず、女性は「嫁に行く」という前提があります。
嫁に行き、子供を作り、夫の家で家事育児のみをこなし、家族すべての面倒をみる。なので勉強や教育は二の次になったり、重要視されない傾向にあるようです。
若い15歳・16歳の少女が親の決めた結婚相手の家に嫁ぎ、大家族の中でひたすら家事をする現実があります。
義務教育できちんと全国民平等に教育を受けてきた日本人には想像できないかもしれません。
パキスタンの教育システム
パキスタンには公立と私立の学校があります。
日本のように義務教育の制度はないようです。
学年に関してはまず初等教育・中等教育・高等教育(短大・日本でいう高専・大学)に分けることができます。
小学校・中学校・高等学校といった区別はなく、初等~中等(class1-10)というような数え方になります。
Class 10 ですと、日本でいう高等学校のレベルになり、これを無事修了すると、大学・短大・専門学校入学になります。
学校内で
1.幼少部門(nursery)
2.初等(prep or primary)
3.中等(class1-10)
4.高等教育
とを一貫して教育を行っている学校もあれば、初等~中等のみ扱う学校もあります。
Class1-10までは、日本でいう小・中・高校の教育内容と当てはまる、とお考えください。
また、日本のように年齢に応じて「何年生」という制度はありません。
「クラス」という呼び方で学年分けしています。英語で「Grade」という呼び方がありますが、かつて英国連邦の一部から独立した背景から、「Class」という単語が使われています。
同じクラスに、年上の子がいたり、年下の子がいたりもします。試験に合格できず(落第制度あり)に同じクラスを経験する子供もいます。途中から違う学校に通うケースもあります。また、日本のように「学区」というものはありません。
公立では、軍がベースの公立学校、地方行政ベースの公立学校があります。
私立に関しては、小さい規模の学校が沢山存在しているので、例えば私の住むギルギット・バルティスタンだけでも数えたらキリがありません。
学習科目
学校教育での必須科目は、パキスタンの国語「ウルドゥー語」とパキスタンの公用語「英語」です。
子供たちの教科書を見てみると、Oxford出版のものがほとんどです。
「英語」「科学」「算数」「コンピューター」の教科書は、英語表記がほとんどです。
他の科目ですと、
「social studies(社会)」
「イスラミア(イスラム教の学習)」
があります。
「social studies(社会)」では、たまにウルドゥー語で書かれた教科書も見受けられます。
「イスラミア(イスラム教の学習)」は全てウルドゥー語です。
Class7をこえると、「数学」「化学」「物理」などの難解な科目が追加されます。
Class10が終了したら、高等教育に進むための試験があります。高等教育課程において、将来の仕事に必要な、より専門的な勉強をするようになります。
日本でいうなら、高校卒業後さらに進学する、との考え方と同様です。
面白いなと思ったのは、「音楽」「体育」「美術」など、子供の創造性や生まれ持った「学習」とは異なる才能を発見して伸ばす、という科目がないことです。これは、イスラム教であるがゆえ、という理由で説明できます。
下の写真はClass2(9歳児くらい)の英語の教科書
こちらはClass7(12、13歳児)の英語の教科書。難易度がぐっと上がります。
男女共学?
イスラム教では、女性を保護するという観点から、女性を人前に出すということは滅多にありません。
女性同伴ですと、レストランでも、カーテンのついたテーブルや、別室に通されることが多いです。
では、学校はどうなのでしょうか?
幼少時はともかく、思春期を迎える年頃の少年少女たちは、どのように勉学に励んでいるのでしょうか。
共学の学校も存在しますが、男女別学の学校も存在します。
初等教育の時点で、男女別の教室で授業を受けるケースもあります。
現在、男女共学の大学も多いので、保守的なムスリムにとっては良い教育環境ではない、との声をしばしば耳にすることがあります。
また、コロナ禍での大学の授業、オンラインでの講義も増えました。
しかし、嫁入り前の若い女性が携帯電話を持つことで批判されることがあります。
オンラインの講義目的で携帯電話を親から与えられているはずなのに、陰ではSNSに夢中になっている若い女性が多いからです。
これもまた、保守的なムスリムにとっては良しとされず、家族の悩みの種になることが少なからずあるようです。
学費
公立の学校では、学費無料という学校もあります。
学費は無料ですが、教科書代・制服代などは別途かかります。
軍ベースの公立学校では、一カ月に2000~3000PKRくらいでしょうか。
教科書などは、お古(年上の子供が使った教科書を下の子が再度利用する)を使うこともあります。
日本人の感覚で言えば、月に2000~3000PKRなど安いものだと感じるかもしれませんが、一カ月の基本収入が少ない家庭にとって、学費は重くのしかかります。
どの家庭も子だくさんですし、上記で述べたような11人も子供がいる女性の家庭などは、全ての子供達に平等な教育を受けさせるというのは不可能のようにも見えます。
裕福な家庭であれば可能かもしれません。
また、通学には学校専用のスクールバスを利用したり(基本有料だが高額ではない)、乗合タクシーで近所に住む子供同士で一緒に登校したりします。
塾はある?
パキスタンの子供達、一般的に学校の授業が終わり家に帰ってくるのが午後13:30~14:00過ぎくらいです。
そのあとは、軽く食事を取って、15:30には近くのモスクでアラビア語やコラーンの勉強をします。
また、学校の勉強だけでは足りない場合、塾ではなく、家庭教師を利用することが多いです。
自宅から近いところに住む大学生が家庭教師になったり、公立・私立の学校教師が授業終了後に自宅で子供達に勉強を教えることがあります。
家庭教師代も生徒一人一カ月につき2000PKR~と、結構バカにならない金額です。
教育格差はある?
残念ながら、「ある」との答えしか出てきません。
先に述べた女性の話もそうですが、特に女子教育は他の国に比べて遅れているとしか言えません。
15歳・16歳の少女が親の決めた結婚相手と結婚するのです。このような少女に十分な教育が行き渡っているとは思えません。
家庭に入り、子供を作り、家事・育児に専念する。
結婚となれば、学業の途中であっても止めざるを得ないのが現実です。中等教育中にいくら成績優秀でも、結婚すれば全て水の泡に終わります。
「女子」への教育格差のほかに、「貧困」による教育格差もあります。
仕事がない親を手伝うべく、学校に通えない子供達もいます。
このような「女子」「貧困」が理由で教育をうけることができない子供たち、学校教育を受けるのは困難ですが、モスクでアラビア語やコラーンの勉強をすることはできます。
パキスタンではイスラム教は生活の基準であり、規則であり、生きる指針でもありますが、「知的学習」という側面で考えると、将来生活の糧になる職業にありつけるかは疑問です。
学習して、自分の頭で物を考えるという訓練もなされません。
日本人学校
パキスタンには日本人学校があります。
が、首都イスラマバードと人口が最も多いカラチにあるのみです。
これらは日本国大使館付属の学校になります。
厳重なセキュリティーのなかで、日本国内で使用されている教科書を使って学ぶことができます。
調べてみると、生徒数は少ないようです。
在パキスタン日本大使館より、教科書配布のお知らせが届きます。
まとめ
パキスタンの教育についてみてきました。
日本のように整った制度がないこともわかりました。
また、残念なことに、宗教上の理由から十分な教育を受けることができない現実もあることがわかりました。
特に「女子教育」に関しては、国を挙げて取り組むべき課題ではないかと私は考えます。
学生時代に「女子教育」を掲げて銃で攻撃され、現在英国で生活しているノーベル平和賞を受賞したパキスタン人女性がいます。
機会があれば、彼女のことを少し調べてみて下さい。
貧困の問題もあります。
誰もが平等に教育を受ける権利がある、ということを忘れてはいけません。
日本にはない現実がここにはあります。
言葉の問題もあります。
パキスタンは多民族・多言語国家であり、それをまとめるのが国語のウルドゥー語であり、公用語の英語であります。
しかし、日常では地域の言語を使用、イスラム教なのでアラビア語も必須、子供たちの負担は大きいです。
しかし、教育を施すのは大人であり、大人ではあるけれど教育を受けていない大人は、子供にも教育を受けさせない、教育とは何ぞや、と考える人も少なくないようです。
国はもっと真剣に教育について取組む必要があるのでは、と考えます。
また、日本のように規律正しく整った教育制度を持つ国からの指導・援助も必要ではないかと考えます。
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